夢、時々日常。

主に夢日記を綴るブログです。ツイッターで細々夢日記をつけていたが、最近長文化してきたため。

夢日記『道を外れる』

見知らぬ数人で山を登る。

何故か見晴らしのいい場所で会費を徴収される。650円。どうしよう50円玉が無い。焦って財布を搔きまわすが、すぐに一枚見つかった。

慌てて幹事の元へ走る。無事に払い終えたが、鞄を持っていないことに気づく。

 

岩陰をのぞくと、友人が大きな鞄の中に私の荷物を詰めているところだった。忘れ物だと思って一時的に預かろうとしているのがわかった。

相変わらずの友人の良心に顔がほころんだが、同時に間抜けであるとも思った。はたから見ると泥棒のようなのだ。

「おい泥棒!」

私が茶化していると、昔の仲間数人もいつのまにか集まってきて友人をつつきまわし始めた。

みんなの気が逸れた隙に、ようやくそっとお礼を言ってその場を離れる。


まだまだ遠い山頂を目指す。
私は密かに気分が悪くなり始めていた。

だが、周りに気取られてはならない。みんなの動きを止めることになるからだ。大丈夫、このぐらい根性で立て直せる。そう思い歯を食いしばって歩みを進める。


ひとりの男が寄り添ってきた。知ってるような知らないような。

「大丈夫?」

円らな瞳で覗き込んでくる。
「大丈夫ですよ」
「あほ」
彼は私の腕を引っ張って、列を抜けた。
なるほど、2人で抜けたらそれほど気後れはしない。お礼が言いたかったが、照れくささで口が重くなる。
すぐに薬局らしいところに着いた。

それは二畳くらいの小さな小さな店で、受付と、客が2、3人入ればもういっぱいである。そこに20人くらいが店の外に溢れて列を作っている。
それを見ただけで、また疲労が募る心地がしたが、彼はニッと笑っている。裏ワザがあるらしい。
彼は順番を無視して店に入ったかと思うと、ニッと笑ったまま帰ってきた。
薬なんて持ってなかった。けれども私は不思議に回復し始めていた。

気づけば真っ白に雪が積もっている。
彼は両手で私の肩を包んで来た。私も彼の肩を包み返す。ハグ、というには中途半端などっちつかずな姿になった。

彼の左手に目をやりながら、口を開く。

「あなた、家庭を壊したいんですか」

「ううん」

「やっぱ大事ですよね」

「うん」

そう言いながらも双方、手を離さなかった。
彼の円らな瞳に影が差しているのを見た。
そうしながら、もっと昔に好きだった男の子の事を思い出していた。似ている。

ああ、そうか。お互い目の前の相手だけを真っ直ぐ見ているわけではないのだ。なんだそれ、笑える。本当に笑った。

なんて私は汚いんだろう。

あんなに、いい子ぶって来たくせに、自分の内心の中核にあたる部分は他の誰より汚れているのだ。

 

けれども、そこから甘い煙が漏れ出して、胸の中の余白を満たすような心地がした。

体が痺れたようになった。力が抜けて、泣き笑いになった顔を彼の肩に押し付ける。


ふいに昔の仲間の一群が通りがかった。
「あんなやつ友達じゃない」
口々に言う。

 

大丈夫、私には彼がいる。

夢日記『彼は空(から)』

2018年3月3日に見た夢。

 

_____________________

 

大雨の夜だった。

「取り返しのつかないことになった。海を渡れば過去に戻れる」

声のデカい人が言うので、そうなのかもしれないと思って、素直に従う事にした。
古い神社の脇から、海底トンネルへ続く階段を降りた。一人きりだと思っていたのに、気づけば複数の足音がある。せっかちに‬‪追い抜いて行く人の横顔が、見知った顔のように見えたが、あまり考えないようにした。そんなこと、関係ないくらい過去に行くんだから。‬
‪しばらく青暗いトンネル内を歩いていたが、いつの間にかどこかの教室の中にいた。席についている顔ぶれは、先ほどのトンネルを一緒に歩いた人間だろうと、‬‪不思議と納得したが、ただ1人の男の顔貌に妙な違和感を覚えた。‬
私が怪訝そうに彼を見ていることに、他のメンバーたちが気づいたようで話しかけてくる。
「彼も一緒に来た」
「彼はいい人、苦労してる」
なぜ'人となり'まで知っているのだろう。なぜ今そのことを伝えてくるのだろう。
皆んな、必死で、私の違和感を消そうとしているように思えた。
何のためにトンネルを抜けたのだっけ。過去の間違いを打ち消すように見せかけて、実は間違いを埋め込まれているのでは無いか。
どこに?私の脳髄に。
もう一度彼を見る。射抜くようなつもりでグッと睨んだ。
すると彼が、背景の教室が、霧のように消え失せて、青暗いトンネルの中に戻っていた。と言うのは勘違いで、満点の星空の下に立っていた。他のメンバーも一緒にいる。
もうあの男のことなんてどうでも良かった。私は星空から目が離せないでいた。
「そうだ。昔は星が多かった。あの頃は」
ずっと見ていたいのに、見つめれば見つめるほどに視界が滲んでくる。

「忘れたくなかったのに」